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東京地方裁判所 昭和60年(ワ)5321号 判決

原告 横田勇三郎

原告 風間清

原告ら訴訟代理人弁護士 黒田隆雄

被告 飯沼マサ

〈ほか四名〉

昭和六〇年(ワ)第九九八三号事件参加人 観光荘温泉組合

右代表者理事長 伊藤久次

右参加人訴訟代理人弁護士 大西保

昭和六一年(ワ)第一一七八五号事件参加人 有限会社観光荘温泉

右共同代表者代表取締役 石田健蔵

同 國分義行

右参加人訴訟代理人弁護士 佐藤敦史

右訴訟復代理人弁護士 横幕武徳

主文

一  被告らは原告らに対し、別紙物件目録記載の各土地について、昭和五二年一一月八日売買を原因とし、原告らの持分各二分の一とする所有権移転登記手続をせよ。

二  昭和六〇年(ワ)第九九八三号事件参加人観光荘温泉組合の原告ら及び被告らに対する請求をいずれも棄却する。

三  昭和六一年(ワ)第一一七八五号事件参加人有限会社観光荘温泉と原告らとの間において、別紙物件目録記載の各土地が右参加人の所有に属することを確認する。

四  昭和六一年(ワ)第一一七八五号事件参加人有限会社観光荘温泉と昭和六〇年(ワ)第九九八三号事件参加人観光荘温泉組合との間において、別紙物件目録記載の各土地が昭和六一年(ワ)第一一七八五号事件参加人有限会社観光荘温泉の所有に属することを確認する。

五  被告らは昭和六一年(ワ)第一一七八五号事件参加人有限会社観光荘温泉に対し、別紙物件目録記載の各土地について、昭和六一年九月一日贈与を原因とする所有権移転登記手続をせよ。

六  訴訟費用中、原告らと被告らとの間に生じた費用は被告らの負担とし、昭和六〇年(ワ)第九九八三号参加事件に関して生じた費用は右事件参加人観光荘温泉組合の負担とし、昭和六一年(ワ)第一一七八五号参加事件に関して生じた費用は原告ら、被告ら及び昭和六〇年(ワ)第九九八三号事件参加人観光荘温泉組合の負担とする。

事実

第一昭和六〇年(ワ)第五三二一号事件

一  当事者の求めた裁判

1  請求の趣旨

(一) 主文第一項同旨

(二) 訴訟費用は被告らの負担とする。

2  請求の趣旨に対する被告飯沼一郎の答弁

(一) 原告らの請求を棄却する。

(二) 訴訟費用は原告らの負担とする。

二  当事者の主張

1  請求原因

(一) 原告らは共同して、昭和五二年一二月八日、訴外飯沼文二(以下、訴外飯沼という。)から、別紙物件目録記載の各土地(以下、本件各土地という。)を含む別紙売買目録(1)ないし(11)の土地を一括して次のような約定で買受けた。

(1) 代金は七〇万円とする。

(2) 原告らは手付金として三〇万円を支払う。

(3) 別紙売買目録(1)、(9)の各土地には訴外亀山きくを権利者とする所有権移転請求権仮登記がされているが、訴外飯沼はその責任においてこれを抹消する。

(4) 右目録(9)、(10)、(11)の各土地はいずれも訴外仁平幹三の所有名義となっているが、訴外飯沼はその責任において原告らへの所有権移転登記をさせる。

(5) 飯沼は原告らに対し、向う一か年以内に原告らの持分を各二分の一とする所有権移転登記を完了する。

(6) 原告らは、右(3)の抹消登記及び右(5)の所有権移転登記がすべて完了すると同時に売買代金残額四〇万円を支払う。

(二) 原告らは訴外飯沼に対し、手付金のうち二〇万円を右売買契約締結と同時に支払い、残額一〇万円を翌九日に支払った。

(三) 訴外飯沼は原告に対し、別紙売買目録(2)ないし(8)の各土地については昭和五三年四月三日に、また同目録(10)の土地については昭和五四年六月二八日にそれぞれ所有権移転登記を了したが、その余の各土地(本件各土地)については所有権移転登記手続の履行を遅滞してきた。

(四) 訴外飯沼は昭和五四年九月一一日に死亡し、妻である被告飯沼マサ及び子であるその余の被告ら四名の五名が同人を相続した。

(五) よって、原告らは被告らに対し、前記売買契約に基づき、本件各土地について、昭和五二年一二月八日売買を原因とし、原告らの持分を各二分の一とする所有権移転登記手続をすることを求める。

2  請求原因に対する被告飯沼一郎の答弁

(一) 請求原因(一)ないし(三)は知らない。

(二) 同(四)は認める。

3  被告飯沼一郎の抗弁

(一) 原告らが訴外飯沼から買受けたと主張する土地は、昭和一七年ないし昭和一九年頃に訴外飯沼が代表者をしていた新郊土地株式会社が開発し宅地分譲した別荘地の宅地所有者全員の通行の用に供される道路であり、また温泉給湯管を埋設するなどの利用にも供されている。そして、原告らがこの既存関係者の利用権を妨げないことは右売買契約の要素をなすものであった。

ところが原告らは、右土地の大部分の名義を取得するや、分譲地取得者の組合である昭和六〇年(ワ)第九九八三号事件参加人観光荘温泉組合が右土地に埋設している給湯管の拡張工事をしようとしたのを妨害し、被告らは右参加人から抗議を受けるに至っている。

このように原告らによる妨害がされ、訴外飯沼の関係者の利用を確保する義務が承継されないことが分かっているのであれば、訴外飯沼は右売買契約をしなかったものであり、右義務の承継は契約の要素であるから、仮に原告ら主張の売買契約の成立が認められるとしても、要素の錯誤により無効である。

(二) 仮に右主張が認められないとしても、原告らと訴外飯沼との間の売買契約は、公序良俗に違反するから無効である。すなわち、原告らは、右土地が分譲地取得者全員の共用に供されることを妨害し、分譲目的が達成されなくなることを唯一の目的として右土地を買受けたものであって、右売買契約は公序良俗に違反する。

4  被告飯沼一郎の抗弁に対する原告らの答弁

(一) 抗弁(一)のうち、原告らが買受けた土地は訴外飯沼が代表者をしていた新郊土地株式会社が開発し分譲した別荘地の宅地所有者全員の通行の用に供される道路であり、また温泉給湯管を埋設するなどの利用にも供されていることは認める。但し、開発の時期は知らない。また、温泉給湯管が埋設されているのは右土地の一部についてだけである。

その余の事実は否認する。

(二) 同(二)は否認する。

第二昭和六〇年(ワ)第九九八三号参加事件

一  当事者の求めた裁判

1  参加人観光荘温泉組合(以下、参加人組合という。)の請求の趣旨

(一) 参加人組合と原告らとの間において、本件各土地が参加人組合の所有に属することを確認する。

(二) 被告らは参加人組合に対し、本件各土地について、昭和一九年九月二〇日売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ。

(三) 訴訟費用は原告ら及び被告らの負担とする。

2  請求の趣旨に対する原告らの答弁

(一) 参加人組合の原告らに対する請求を棄却する。

(二) 訴訟費用は参加人組合の負担とする。

二  当事者の主張

1  参加人組合の請求原因

(一) 参加人組合は、伊東市鎌田地区の一部において訴外飯沼が経営していた新郊土地株式会社が温泉付土地として分譲した観光荘と称する分譲地内で温泉の供給を受けてそれぞれの分譲地を所有している者をもって組織する権利能力のない社団である。

(二) 訴外飯沼は昭和一五年頃から一九年頃まで新郊土地株式会社の名称で右温泉付土地分譲事業をしていたが、太平洋戦争の激化に伴い右土地分譲事業を中止し、昭和一九年九月二〇日、右観光荘地区における分譲残地及びこれに必要な水源地(山林)、道路等の一切を参加人組合に売渡した。

(三) 参加人組合は右同日訴外飯沼の代行者である新郊土地株式会社に対して買受代金全額を支払った。そして、分譲残地部分は組合員各員に転売したが、道路、水源地等の公共用地は、参加人組合が権利能力を有しなかったので、所有権移転登記の手続をすることなく今日に至った。

本件各土地は、従来の公共用農道を廃止して、分譲地内の交通及び近隣農家の通行のために観光荘分譲地内に設けられた公衆用道路であって、過去三〇年余の間何らの支障もなく住民は通行のために利用し、訴外飯沼もこれについて何ら異議を申入れることなく経過してきた。

(四) 原告風間は昭和四四年頃から観光荘地区に居住するようになり、参加人組合の理事の役職につき、職務の関係上本件各土地などが未登記であることを知ると、原告風間の水道工事等の仕事を請負っている原告横田と共謀して、これらの土地を参加人組合が買受けていることを知りながら、昭和五二年に至って訴外飯沼をして本件各土地を含む観光荘地区の未登記土地について二重に売買契約を締結させた。

原告風間は、観光荘地区に近い将来市営水道が引かれることになるので、その際伊東市から水道管の敷設について多額の金員を獲得して巨利を収めようとして、親密な間柄にあった原告横田を誘って両名で右土地を買受けたものである。観光荘厚生組合の簡易水道の貯水槽の余剰水を原告風間所有地の防火用水池に引水するために右土地を取得したとする原告らの主張(後述)は事実に反する。

また、原告らは参加人組合による右土地における引湯配管工事を妨害するなど、住民に大きな迷惑を与えている。

このように、原告らは、参加人組合及び一般公衆に迷惑を与え、かつ、暴利を得ることを目的として、参加人組合の所有であることを知りながら、害意をもって右土地を取得したものであるから、参加人組合は登記なくして本件各土地の所有権を取得したことを原告らに対抗することができる。

(五) 訴外飯沼は昭和五四年九月一一日死亡し、被告らが同人を相続した。

(六) よって、参加人組合は、民事訴訟法七一条後段によって当事者参加し、原告らに対しては本件各土地の所有権確認を求め、被告らに対しては本件各土地について前記売買に基づく所有権移転登記手続をすることを求める。

2  請求原因に対する原告らの答弁

(一) 請求原因(一)は認める。

(二) 同(二)は否認する。

(三) 同(三)のうち、原告らが買受けた土地が観光荘地域内に存する公衆用道路であり、公衆の通行に供されてきたことは認め、その余の事実は知らない。

(四) 同(四)のうち、原告風間が昭和四四年頃から観光荘地区に居住するようになったこと、同原告が参加人組合の理事の役職についたことがあること、原告らが昭和五二年訴外飯沼から別紙売買目録記載の土地を買受けたこと、参加人組合が温泉運搬管の埋設工事をしようとしたことは認め、その余は否認する。

原告らが右土地を買受けた経過は以下述べるとおりであって、仮に訴外飯沼と参加人組合との間に本件各土地等についての売買契約が締結されていたとしても、原告らはその事実を全く知らなかったものであって、背信的悪意者などではありえない。

原告風間は、昭和四八年七月頃、同原告所有の伊東市鎌田字土ヶ久保一〇九三番二四の土地に防火用水池を築造し、観光荘厚生組合水道部会の許可を受けて、夜間に限って同部会の管理にかかる簡易水道から水を池に取入れていた。観光荘厚生組合とは、観光荘地域(昭和一〇年代後半に新郊土地株式会社が造成分譲した地域)内の全戸が組合員となっている町内会組織であり、その水道部会とは、観光荘地域内の各戸のうち、簡易水道から飲用水の供給を受けている者で構成されている組織である。

ところが、昭和五二年夏頃、簡易水道の水の出が悪くなったことから、原告風間が夜間取水の制限を超えて日中も取水しているのではないかという誤解が持ち上った。これは配水管の損傷による漏水が原因であることが判明したが、原告風間は、このような誤解が将来再び起こるかもしれないことをおそれ、当時観光荘厚生組合簡易水道担当理事であった原告横田の意見も聞いて、簡易水道からの取水を止めにして、国立伊東病院の貯水槽(観光荘地域内の厚生省所有地にある。)の余剰水を池に引いてくることにしたいと考えた。

そこで原告風間は、右貯水槽から池までの送水管の敷設について道路所有者の許可を得たいと考え、右経路に当る一〇九一番一一、一〇九二番二二及び一〇九三番二八の各土地の所有者を調査したところ、右各土地は仁平幹三及び訴外飯沼の所有であることが判った。

そして、原告らは昭和五二年七月頃訴外飯沼を訪ね、右の事情を説明し、送水管を敷設するために同人所有の道路を使用させてもらいたいと要請したところ、同人は検討を約した。

ところが、その数日後、国立伊東病院の伊藤久次院長から原告風間に対して、防火用水のための送水管を厚生省所有地内に敷設してはいけないとの申渡しがあり、また、同年八月頃、同院長から観光荘厚生組合の理事である原告ら両名及び訴外宮本の三名に対し、「簡易水道の貯水槽の余剰水は不要であるから、今後はこれを病院の貯水槽へ流し込んではいけない。余剰水の排水パイプを直ちに撤去せよ。」との申渡しがあった。従来、簡易水道の貯水槽から溢れ出る余剰水は、右排水パイプで低地にある病院の貯水槽へ落し入れ、これによって、一方簡易水道の余剰水を排水するとともに、他方病院の用水を補うために役立ってきたのであるが、にわかにこれが禁止されることとなった。

そこで、観光荘厚生組合の執行部である原告ら両名と宮本の三名としては、防火用水池への引水にも増して、簡易水道の貯水槽の余剰水の排水について緊急に何らかの代替措置を講ずる必要に迫られ、協議の末、右余剰水を道路を経由して池へ引くことによって排水することとした。

そこで、原告らは再び訴外飯沼を訪ね、以上の経過を説明し、同人所有の道路を使わせてもらいたいと歎願したところ、同人は、貸すことはできないが、県道より上の地域にある道路全部を一括して売却したいとのことであった。原告らと宮本の三名で協議した結果、当面原告らが買取っておき、将来条件の整うのを待って観光荘厚生組合水道部会へ譲渡しようということになり、原告らは訴外飯沼と昭和五二年一二月八日売買契約を締結するに至ったものである。

(五) 同(五)は認める。

3  原告らの抗弁

仮に本件各土地が参加人組合と訴外飯沼との間の昭和一九年九月二〇日の売買契約の目的物に含まれるとしても、本件各土地については昭和二二年春頃右売買契約は解除された。

すなわち、右売買契約には、参加人組合がその譲受けにかかる観光荘分譲地を逐次処分し、その処分額が九万一五〇〇円(売買代金相当額)に達したときは、処分未了の残存土地を新郊土地株式会社に返還する旨の特約があった。

そして、昭和二二年春頃参加人組合の処分による処分額が右金額に達したので、その頃、本件各土地を含む処分未了の残存土地については、両者間において先の売買契約が解除された。

4  抗弁に対する参加人組合の答弁

抗弁は否認する。訴外飯沼名義のまま残されている土地は、道路として欠くことのできない公衆用道路、参加人組合及び観光荘地区住民の生活に欠くことのできない温泉源泉、水源地などであって、これを参加人組合が訴外飯沼に返還する理由は全くない。未登記のまま残されていたのを奇貨として訴外飯沼あるいはその妻である被告飯沼マサが売渡してしまった土地があるにすぎない。

第三昭和六一年(ワ)第一一七八五号参加事件

一  当事者の求めた裁判

1  参加人有限会社観光荘温泉(以下、参加人会社という。)の請求の趣旨

(一) 主文第三項、第四項同旨

(二) 被告らは参加人会社に対し、本件各土地について、昭和一九年九月二〇日売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ。

(三) 参加による訴訟費用は原告ら及び被告らの負担とする。

2  請求の趣旨に対する原告らの答弁

(一) 参加人会社の原告らに対する請求を棄却する。

(二) 訴訟費用は参加人会社の負担とする。

二  当事者の主張

1  参加人会社の請求原因

(一) 本件各土地は参加人組合の所有であった。この点については参加人組合の主張を全て援用する。

また、原告らが背信的悪意者であることについても参加人組合の主張を全て援用する。

(二) 参加人会社は昭和六一年九月一日、本件各土地を参加人組合から譲受けた。

(三) よって、参加人会社は民事訴訟法七三条、七一条後段により、参加人組合の原告らに対する当事者参加訴訟及び参加人組合の被告らに対する当事者参加訴訟に当事者参加し、原告ら及び参加人組合に対しては本件各土地が参加人会社の所有に属することの確認、被告らに対しては昭和一九年九月二〇日の売買に基づく所有権移転登記手続をすることを求める。

2  請求原因に対する原告らの答弁

請求原因は全て否認する。なお、参加人組合の主張に対する答弁は昭和六〇年(ワ)第九九八三号参加事件において述べたとおりである。

第四証拠《省略》

理由

一  《証拠省略》によれば、昭和六〇年(ワ)第五三二一号事件の原告らの請求原因(一)ないし(三)の各事実(原告らと訴外飯沼との間の別紙売買目録記載の各土地についての売買契約の成立、手付金の支払及び一部の土地についての所有権移転登記義務の履行)が認められる。

被告飯沼一郎の錯誤の主張については、これを認めるに足りる証拠はない。また、同被告の公序良俗違反の抗弁については、単に原告らが同被告主張のような動機を持っていたというだけでは売買契約が公序良俗に違反するものではない。なお、後に認定するとおり、原告らは参加人会社との関係においては背信的悪意者であると認められるが、そのことから直ちに原告らと訴外飯沼との間の売買契約そのものが公序良俗に違反し無効になるものとは解されない。

二  《証拠省略》によれば、以下の事実が認められる。

1  訴外飯沼が代表者である新郊土地株式会社は、戦前、伊東市郊外の丘陵地である同市鎌田の一部で、当時は主としてみかん畑等の農地であった場所を買取って宅地造成し、山麓の温泉源泉から温泉をポンプで揚げて最も高い場所に温泉タンクを作り、これに貯えた温泉を各家庭に分譲する方式で、一造成地に温泉源泉持分一を併せて温泉付き別荘地として、伊東温泉水道付観光荘分譲地という名称で、昭和一五年頃から終戦頃までにかけて分譲をした。

なお、分譲した土地は新郊土地株式会社の所有名義ではなく、訴外飯沼又は右分譲事業に出資をした人間の名義になっていた(ちなみに、本件各土地のうち、一〇八七番一〇の土地は昭和一四年五月三一日受付で同日売買を原因として訴外飯沼のための所有権取得登記がされており、一〇九一番一一及び一〇九二番二三の各土地は、昭和一四年五月一二日に同日売買を原因として岩崎清重のために所有権取得登記がされ、その後昭和一六年六月二七日に清宮保のために、昭和一七年八月三日に仁平幹三のためにいずれも売買を原因として所有権取得登記がされている。また、前出甲第一号証によれば、昭和五二年当時、別紙売買目録記載のその余の土地のうち、一筆は仁平幹三名義であり、七筆は訴外飯沼名義であったことが認められる。)。

また、大西保証人の父親が買受けた土地については、売買代金の領収書は「合資会社新郊土地商会(代表社員飯沼文二)」名で発行されているが、登記済証である売買契約書の売主は訴外飯沼個人となっている。

2  新郊土地株式会社は戦争末期に至り経営が悪化したため、観光荘分譲地の残地全部を伊東温泉更生組合に売却することにした。右組合は、温泉付観光荘分譲地の分譲を受けた者によって組織された町内会的な団体であった(法人格は有しなかった。)。

そして、新郊土地株式会社(取締役社長訴外飯沼)と伊東温泉更生組合(常任理事浅野辰三郎)とは、昭和一九年九月二〇日、右土地について代金を九万一五〇〇円とする売買契約を締結した。両者間で作成された同日付の売買契約書では、売買の対象となる物件は「四〇二八坪外水源地一筆外に源泉一か所及び電話一本」であるとされ、ほかに浅野辰三郎及び訴外飯沼連名の「附記」があり、「本契約の売買は新郊土地株式会社が昭和一九年九月二〇日現在所有する伊東町鎌田観光荘地内の一切の土地その他の財産及び権利(二五馬力モーター一台を除く。)を伊東温泉更生組合に譲渡するものにして、現に新郊土地株式会社が使用する中間ポンプ一台もこの金額に含まるるものとす」との記載がある。

更生組合は昭和二〇年八月三日までに売買代金全額を支払った。

3  本件各土地を含む別紙売買目録記載の土地は、観光荘分譲地が開設された際に公衆用道路として造られたものであり、本件各土地のうち一〇八七番一〇及び一〇九一番一一の土地は、いずれも昭和一四年に地目が畑から公衆用道路に変更されている(一〇九二番二三の土地の地目は畑のままである。)。

そして、右道路は、観光荘分譲地内の住民の通行や付近の農園、他の分譲別荘地への通行の用に供されている。

4  伊東温泉更生組合は戦後その活動を休止し、温泉の供給も中止されていたが、昭和三八年頃観光荘分譲地内の温泉権付分譲地の所有者(戦後は温泉権を所有していない住民も多くなっていた。)が資金を出し合って温泉の供給を再開し、右所有者らによる組織を観光荘温泉組合(参加人組合)と称することとし、その頃組合の規約も作成した。

右規約によれば、参加人組合は伊東市鎌田字桜ヶ丘一三九番地九に存在する鉱泉地一坪及び引湯に関する一切の設備を維持、管理し、その開発に努力し、観光荘厚生組合(観光荘地内の住民全員による相互の福利厚生、親睦を図るための組織である。前出の伊東温泉更生組合とは異なる組織である。)と提携し、もって土地の発展を期し、各組合員の福利厚生を増進し、相互の親睦を図ることを目的とするものであり、その組合員は右鉱泉地一坪の持分一〇〇分の一以上の共有者であって所定の加入金を組合に納入した者であるとされ、組合は組合員に対し前記鉱泉を開発し各組合員に引湯するものであるが、引湯は観光荘分譲地内に土地又は借地権を有する者に限られている。また、組合には理事等の役員を置き、理事の互選によって理事長一名を選任し、理事長は組合を代表しかつこれを続轄すると定められている。

昭和一九年九月二〇日付の前記売買契約書(丙第二号証の一)及び売買代金の領収書(丙第二号証の二ないし五)は、前出の浅野辰三郎(伊東温泉更生組合の常任理事)が保管していたが、その後は参加人組合の理事長が保管している(本件訴訟において、右丙第二号証の一ないし五は参加人組合から証拠として提出されている。)。

以上の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

そして、右認定の事実によれば、伊東温泉更生組合は観光荘分譲地内の残存する「一切の土地」を買受けたものであり、分譲地内の道路部分だけを除外した形跡は全くなく、また道路部分だけを保留する合理的理由もないはずであるから(新郊土地株式会社ないし訴外飯沼にとって、分譲地内の道路部分だけを所有していても全く無意味であるが、分譲地の分譲を受けた者にとっては道路は必要不可欠のものである。)、本件各土地等の道路部分も右の「一切の土地」に含まれるものであり、伊東温泉更生組合は本件各土地等をも買受けたものであると認定することができる。

次に、昭和一九年九月二〇日付の売買契約書では売主は新郊土地株式会社とされているが、前記認定のとおり土地は訴外飯沼らの所有名義とされている。この点につき、伊東温泉更生組合から観光荘分譲地内の土地(伊東市鎌田字蔵ヶ窪一〇八二番地の一)を買受けた小山秀夫がその所有名義人である仁平幹三に対して所有権移転登記を求めた訴訟の判決(昭和四八年一月二六日言渡。丙第三号証。《証拠判断省略》)において静岡地方裁判所は、観光荘分譲地は新郊土地株式会社の所有ではなく第三者が所有していたので、昭和一四年頃訴外飯沼、岩崎清重において出資して買収したため、所有権移転登記は同人らの名義にしたが、分譲事務は新郊土地株式会社が行ったこと、昭和一六年頃分譲地の買取り資金の出資者が右岩崎から清宮保に交替し、更に昭和一七年頃には仁平幹三に交替するに至り、それぞれその頃同人らの名義に所有権移転登記手続を経由したが、分譲事務は従前どおり新郊土地株式会社が行ったこと等の事実を認定している(本件各土地も、訴外飯沼名義のものと、岩崎清重、清宮保、仁平幹三と順次所有権移転登記がされているものとがあることは前記認定のとおりである。)。このことと、前記認定のとおり分譲地の売主が訴外飯沼となっている例もあることとを併せ考えると、新郊土地株式会社は訴外飯沼から分譲事務の委託を受けて訴外飯沼のために売買の事務を代行していたにすぎないものであって、昭和一九年九月二〇日の前記売買契約における売主は訴外飯沼であると解される(仁平幹三は分譲事業への出資者にすぎないものと推認される。)。

更に、前記認定の事実によれば、参加人組合は伊東温泉更生組合と同一性を有する組織であり、その後身であるものと認められる(参加人組合が昭和一九年九月二〇日付売買契約書及び右売買の代金の領収書を所持していることはその同一性を裏付ける極めて有力な根拠である。)。

ところで、本件各土地等は訴外飯沼らの所有名義のままとされていたのであるが、《証拠省略》によれば、その理由は、伊東温泉更生組合も参加人組合も法人格を有しないために組合名義に登記することはできなかったこと、昭和三八年頃に制定された参加人組合の規約では同組合が所有する不動産は理事長及び理事一名以上の共有名義をもって登記することと定められているが、理事長等はしばしば交替するため、所有名義の変更の度ごとに費用がかかるのを避けたこと、費用までかけて所有名義を訴外飯沼らから移さなくても、道路の通行等には何らの支障もなく、特段の問題も生じなかったこと等であることが認められる。したがって、本件各土地等が訴外飯沼らの名義のままであったということは、伊東温泉更生組合が右土地を含めた土地を買受けたという前記判断を左右するものではない。

原告らが観光荘分譲地内の道路である別紙売買目録記載の土地を昭和五二年一二月に買受けたことは前記認定のとおりであるが、証人大西保の証言によれば、参加人組合はこれに対して何ら対策を講じておらず、訴外飯沼の責任を追及するなどの行動もとらなかったことが認められる。しかし、この点については、証人大西保の証言によれば、昭和五三年三月頃、当時参加人組合の理事長をしていた大西保証人は、原告風間が参加人組合のために道路を買受けたから、いつでも名義を移す旨述べていたので、特に問題が生じることはないであろうと考えてそのまま聞き流したものであること、また同証人は、訴外飯沼名義のままの道路は他にも一五筆位あり、時間と費用がかかるので、同人と交渉してその名義を変更する等の手続を直ちにとろうとは考えなかったことが認められる。したがって、前記のような参加人組合の態度をもって、参加人組合が別紙売買目録記載の土地を買受けていない根拠とすることはできない。

また、《証拠省略》によれば、原告らが買受けた別紙売買目録記載の土地のほかに、観光荘分譲地内の訴外飯沼名義のまま残されていた数筆の土地(地目は雑種地、山林又は宅地)が昭和四三年から昭和五六年の間に訴外飯沼又はその相続人である訴外飯沼マサによって第三者に売却され、所有権移転登記もされていることが認められる。しかし、《証拠省略》によれば、右各土地のうち伊東市鎌田字土ヶ久保一〇八八番(山林)以外の土地はいずれも道路であって、観光荘分譲地内の住民の通行等に欠くことのできないものであるが、訴外飯沼又は相続人が第三者に売却してしまったものであることが認められる。また、《証拠省略》によれば、右の土ヶ久保一〇八八番の山林は観光荘分譲地へ飲料水を供給する水源地であり、昭和一九年九月二〇日付売買契約書に「水源地一筆」として明記されている土地であって、終戦後伊東温泉更生組合が右山林内の竹を伐採して換金したこともあること、この土地の現所有名義人加賀美キンの夫は温泉を再建するための費用を負担することを拒んだので参加人組合は同人に温泉を供給しなかったところ、同人は参加人組合に反感を抱き、訴外飯沼から水源地等を買受けたものであることが認められる。したがって、前記数筆の土地が第三者に売却され、そのままの状態になっているからといって、伊東温泉更生組合ないし参加人組合がこれを買受けてはいない根拠とすることはできない。

更に、《証拠省略》によれば、同証人は、昭和五八年一月二三日付の観光荘厚生組合(《証拠省略》によれば、観光荘厚生組合は、伊東市鎌田観光荘地内に住居を有する者及び家屋を所有する者を組合員として組織され、組合員の福利厚生の増進及び組合員相互の親睦を図ることを目的としていることが認められる。)理事長宛の「提案」と題する書面で、「観光荘内の道路(公道を除く)は未だに新郊土地株式会社(社長飯沼文二)の所有となっており、これを抜きがけに個人で部分的に買受けて通行権について紛争が惹起しているようであるが、この土地を全部観光荘住民の共有地とするように飯沼側と交渉する必要がある。そのためには若干の費用が必要である。」との提案をしていること、右提案は観光荘厚生組合の総会に提出されたものであることが認められる。このことは、参加人組合が昭和一九年に既に右道路等を買受けているという事実と矛盾するように考えられないではない。しかし、証人大西保の証言によれば、右提案の「新郊土地株式会社の所有となっている」というのは訴外飯沼の登記名義のままとなっているという意味であること、観光荘厚生組合は観光荘地内の居住者全体の組織であり、参加人組合の組合員も全員が観光荘厚生組合の組合員となっているので、右道路を観光荘厚生組合の所有としておけば将来問題が生じないであろうと考えて右の提案をしたものであること、「若干の費用が必要である」というのは、新たに買取るという意味ではなく、飯沼との間で登記の問題を解決するための訴訟等の費用、本件各土地等を買受けている原告らとの間で問題を解決するための費用を指しているものであることが認められるから、大西保証人が前記のような提案をしたことは、参加人組合が右道路を先に買受けていることと必ずしも矛盾するものではない。

三  前出静岡地方裁判所判決によれば、この事件において仁平幹三は、新郊土地株式会社と伊東温泉更生組合との間には、右組合が買受けた分譲地を逐次処分しその処分額が新郊土地株式会社に支払った金額を充足したときは、右組合は残存土地を新郊土地株式会社に返還するとの特約があった旨の主張をしており、判決も売残った土地が仁平幹三に戻った可能性があるかのような認定をしていることが認められる。

しかし、証人大西保の証言によれば、同証人はそのような話は全く聞いていないことが認められる。また、右判決における主張等のほかには、原告ら主張の契約解除の事実を窺わせる証拠は全くない。

したがって、右の判決における主張等だけを根拠に原告主張の右契約解除の事実を肯認することはできない。

四  《証拠省略》によれば、昭和五九年七月、参加人組合の組合員全員を社員とし、参加人組合の所有する温泉権の維持、管理、運営及び組合員に対する温泉湯の供給並びに同組合の所有する不動産の信託管理等を目的として有限会社観光荘温泉(参加人会社)が設立され、参加人組合は昭和六一年九月一日参加人会社に本件各土地を無償で譲渡したことが認められる。

五  以上認定したところによれば、原告らも参加人会社も本件各土地を譲受けていることになる。そして、双方とも所有権移転登記をしていないから、原告らは登記の欠缺を主張できない背信的悪意者であるとの参加人会社の主張について判断する。

《証拠省略》によれば、以下の事実が認められる。

1  観光荘分譲地内に居住している小山秀夫は、伊東温泉更生組合から買受けた土地について登記名義人である仁平幹三に対して所有権移転登記手続を求める訴訟を昭和三八年に熱海簡易裁判所に提起した。この事件については昭和四八年一月二六日に静岡地方裁判所において控訴審判決の言渡があり、小山秀夫の勝訴に終った。

この訴訟の途中で小山秀夫は、昭和一九年九月二〇日の新郊土地株式会社と伊東温泉更生組合との間の売買契約書(本件の丙第二号証の一)及び右売買の代金の領収書(本件の丙第二号証の二ないし五)の存在を知り、これを当時の参加人組合の理事長から借受けて右訴訟の証拠として提出した。

2  小山は昭和四五年頃から原告風間と深い付合いをしていたが、右控訴審判決後に原告風間に判決のコピーを渡し、右丙第二号証の一ないし五の書類も原告風間に見せた。

また、小山は、右裁判の係属中に、観光荘分譲地内で訴外飯沼と仁平幹三の所有名義のままになっている土地を表示した地図を作成したことがあったが、原告風間は小山からこの地図をもらい受けた。

3  昭和四八、九年頃、原告風間は小山に対し、「訴外飯沼名義のままで残っている道路部分の土地を同人から買受けて登記し、これを伊東市役所に高く売りつけよう」という趣旨のことを申入れたことがある。

4  観光荘分譲地居住者の生活用水は谷川の水を利用した簡易水道に依存しており、この簡易水道の維持、管理は観光荘厚生組合が行っていた。

そして、観光荘分譲地のうち県道下地域については伊東市営水道から供給されるようになり、昭和五三年一月一六日の観光荘厚生組合の総会で、簡易水道施設の維持管理とこれに伴う水道特別会計については、地域的に常時施設を使用している県道上の地域の組合員において担当するものとする旨の決議がされた。

県道上の地域の居住者も簡易水道を伊東市営水道に切替え、市営水道からの供給を得たいとの要望が強く、昭和五四年一月二〇日には観光荘厚生組合の代表(役員)から伊東市水道部長に対してその旨の請願書が提出されている(もっとも、伊東市水道部長からは、同年二月二日、観光荘地域の全面市営水道化は現段階では困難である旨の回答がされている。)。

訴外飯沼名義のままの土地(道路)は県道下の地域にも多数残っているが、原告らが買受けた土地は全て県道上の地域にある。

以上の事実が認められ(る。)《証拠判断省略》そして、右認定の事実によれば、原告風間は昭和五二年以前に、参加人組合が本件各土地等を既に買受けていることを良く知っていたものであり、原告風間が本件各土地等の道路部分を買受けたのは、伊東市営水道が県道上の地域に供給されるようになる際に何らかの利益を得ようという意図に基づくものであると推認することができる。

原告風間は、別紙売買目録記載の土地を買受けた理由として、原告ら主張のとおりの供述をしている(第一、二回本人尋問)。

しかし、この供述はにわかに措信し難いものである。原告風間は、観光荘厚生組合が維持管理する簡易水道の貯水槽の余剰水を処理しなければならないということが右土地を買受けた主な動機である旨供述する。しかし、当時原告風間が観光荘厚生組合の理事長であり、原告横田が簡易水道担当の水道理事であったとしても、簡易水道の問題は観光荘厚生組合(少くとも右水道を利用している県道上地域の居住者)全体の問題であるから、原告らが個人的に右土地を買受けてこの問題を処理するというのは不合理である(しかも、原告風間は、右の買受けについては事前に観光荘厚生組合にはかってはいないというのである。)。また、《証拠省略》によれば、観光荘分譲地内に居住する鈴木正勝が昭和五三年三月頃住居入口の工事をしたところ、原告風間が同人に対し「原告風間の所有地に勝手に入口を取付ける工事をしてはいけない」と申入れてきたので、鈴木は紛争を避けるために入口の幅員を狭くしたままで工事を中止したこと、原告風間は昭和五五年頃にも観光荘分譲地の居住者である五十嵐力が道路に水道管を敷設しようとしたところ、同人に対し、「お前の家屋の所の道路は原告風間の土地だから勝手に通るな」と述べたこと、昭和五九年一二月に参加人組合が原告らが買受けた道路に送湯管を埋設する工事をしようとして、原告風間に対し、右土地は参加人組合が昭和一九年に買受けているものであるから、右工事を了承されたいとの内容証明郵便を送付したところ、原告風間らは参加人組合を債務者として工事禁止の仮処分を申請し、この仮処分事件については原告らが工事の施行を承諾すること等を内容とする和解が成立したものの、その後も原告横田が工事業者に対して種々文句を付けたため参加人組合は業者を交替させざるをえなかったので、参加人組合は相当の損害を被ったこと、原告風間は参加人組合の組合員として右埋設工事等については賛成していたものであること、以上の事実が認められる。これらの原告らの利己的な態度は、原告らが前記土地を観光荘厚生組合全体の利益のために買受けたということとは矛盾するものであるといわざるをえない。なお、右土地を買受けた理由についての原告らの主張が本件訴訟の途中において変更されていることも看過することができない。すなわち、この点に関する原告らの当初の主張は、原告風間の所有土地内の防火用水池に簡易水道の貯水槽の余剰水を引いてくるためであったというものである(昭和六〇年一一月二八日付準備書面)。その後、昭和六一年七月一〇日付準備書面において、本判決の事実摘示記載のような主張に変更したものである(当初の主張によれば、専ら原告風間の個人的利益のために買受けたことになり、また、原告横田が買主の一人になった理由を説明できないことになる。)。

なお、《証拠省略》によれば、原告風間は昭和五二年当時は参加人組合の理事であったことが認められる。

以上のとおり、原告らは、本件各土地等を参加人組合が買受けていることを十分知りながら、何らかの不当な財産的利益を得ることを目的として、参加人組合の組合員などにとって必要不可欠な道路である右土地を買受けた(しかも、原告風間は参加人組合の理事の地位にあったものである。)ものであるから、参加人組合及びこれから本件各土地を譲受けた参加人会社(前記のとおり、参加人組合とは密接な関係がある。)の登記の欠缺を主張することのできない背信的悪意者であるというべきである。

したがって、参加人会社は原告らに対し、本件各土地の所有権を取得したことを主張することができる。

六  《証拠省略》によれば、訴外飯沼は昭和五四年九月一一日に死亡し、被告らが同人を相続したことが認められる。

したがって、被告らは原告らに対し、本件各土地について昭和五二年一二月八日売買を原因とする所有権移転登記手続をする義務がある。

また、参加人組合は権利能力のない社団であってその名義に登記をすることはできないのであるから、参加人会社は被告らに対し直接本件各土地についての所有権移転登記手続を求めることができるものと解される。そして、その登記原因は、訴外飯沼と参加人組合との間の売買ではなく、参加人組合と参加人会社との間の昭和六一年九月一日贈与とするのが相当である。

七  以上の次第であるから、原告らの被告らに対する請求並びに参加人会社の原告ら、参加人組合及び被告らに対する各請求(但し、被告らに対する請求についての登記原因は右のとおりにすべきである。)を認容し、参加人組合の原告ら及び被告らに対する各請求を棄却する(参加人組合は本件各土地の所有権を有しないし、登記請求権もない。)こととする。

よって、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 矢崎秀一)

〈以下省略〉

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